ヤマの絆

木沢地域の新潟県中越大震災

生活の場を破壊する巨大な災害のなかで
見つけたものが、たくさんあります。
それは、木沢に生きる人々の未来を変えた出来事でした。

発災

2004(平成16)年10月23日17時56分、新潟県中越地域をM6.9の直下型地震が襲い、観測史上初の震度7を記録。甚大な被害をもたらしました。

その震源地がある木沢・峠地域では住宅全壊率は77.5%におよび、二子山の斜面は崩落。道路はズタズタになり、地域の外部(武道窪)へと続く道路も土砂でふさがれ、陸の孤島となったのです。さらに、倒壊した住宅の下敷きとなった星野ソマさんが亡くなられました。

いのちの道

突然の悲劇を前にして、木沢の人々はあきらめませんでした。
いま自分たちに何が必要か考え、できることから作業を始めたのです。
救助活動を行い、食事を分け合い、みんなで集まり夜を明かしました。
さらに、このような状況のなか、木沢の人々は自力で重機を動かし、道路を修復。いのちの道を切り開いたのです。
それは「自分たちでできることは、自分でやる」という「ヤマの暮らし」によって培われた、木沢の「生きるチカラ」が発揮された瞬間でした。

発災から三日目には、危険な道を越えて、川口町(当時)の姉妹都市・狛江市の皆さんが仮設トイレを木沢に運んでくれました。その後は自衛隊や、様々なボランティアの方々が木沢を訪れ、炊き出しから復旧のお手伝いまで、木沢の人々の日々の生活を支えてくれました。

発見

地震による避難生活の日々は、そこで活動する人々に、それぞれの発見と交流をもたらしました。
木沢を訪れたボランティアの人々は今まで聞いたこともなかったこの土地の「ヤマの暮らし」を発見しました。
そして木沢の人々はそのボランティアの視線を通し、伝統や自然、暮らし方など「私たちが今まで住んでいた場所の価値」を発見したのです。
これをきっかけに、地震がなければ生まれなかったであろう、交流の「絆」が育まれていきました。

復興

地震という不幸は、しかし、木沢の人々にとって生き方を考える機会となりました。道路や家屋の再建を進める一方で「この場所でどう生きるのか」木沢の人々は真剣に話し合いました。その手には、地震以前には無かった、たくさんの人々との「絆」がしっかりと握られていました。

この「絆」を大切にしたい。そして、もっと多くの人とふれあうことで「絆」を大きく育てたい。
そして、木沢を元気にしたい。

このような想いから「フレンドシップ木沢」が誕生。現在、たくさんの交流事業を通し、ふれあいの輪を広げています。

地震の前より、もっと明るく、もっと元気に。木沢のみんなは復興を通し、より豊かなふるさとを築くことを心に誓いました。
今もなお、その努力は続いています。そして、木沢を訪れる人たちも少しずつ、増えているのです。

生まれた「絆」は、今日も元気に、すくすくと育っています。

西宮との絆

木沢の復興に関わってきた大阪大学の学生が「畑仕事や交流を木沢で楽しんだ。次はみんなが大阪に来てよ!」と発案したのが、そもそもの始まり。

2008年1月16日には大阪大学で学生の皆さんと交流し、翌日の1月17日に阪神・淡路大震災の慰霊祭に出席。その時に、西宮市の復興住居に住む被災者の皆さんとの交流会が行われ、木彫りの地蔵菩薩をいただきました。
同年10月23日には西宮の皆さんが木沢を訪問。お堂に安置されたお地蔵様にお参りした後は木沢の料理に舌つづみ!翌日は木沢焼を体験するなど楽しいひと時を過ごし、ここから、木沢と西宮の親しい交流が始まりました。

聞くところによると、阪神・淡路大震災の辛い記憶に沈んでいた人も、震災でパワーを増した(?)木沢衆の
バイタリティーにふれて、元気がわいてきたというエピソードも。そんな話が、木沢のみんなの熱い心を、もっともっと熱くします。

会えて、よかった。ほんとに、よかった。西宮の皆さん、これからもよろしくです!

西宮との絆

フレンドシップ木沢 震災記録集

新潟県中越大震災の発災から復興まで、木沢の記録を集めた冊子です。
貴重な記録写真、木沢衆一人ひとりの体験談、ボランティアとの交流、復旧・復興の様子など“災害に負けない”木沢の姿を、次の世代に伝えます。

新潟県中越大震災/木沢・峠地区の記録 「前へ 震度7に克つ」ダウンロードはこちらから(27.3MB)
中越大震災から10年/長岡市川口木沢・峠地区震災復興記念詩 「轍-わだち- 未来へ繋ぐ木沢の軌跡」
ダウンロードはこちらから(36.8MB)

フレンドシップ木沢 震災記録集

復興基金を活用した活動について

木沢では復興基金を利用し3つのプロジェクトからなる「ヤマの匠プロジェクト」を実施。復興へ役立てました。

①やまぼうしプロジェクト

集落の交流拠点として整備。自然に人々が集まれるベンチや植栽の整備。来訪者に対する集落案内の看板設置などを実施。木沢のシンボル的施設になっています。

②山と虹プロジェクト

木沢の自然を生かした交流体験プログラムとして二子山を整備。遊歩道階段の整備、展望台の設置、森林浴広場の整備により、歩いて楽しい観光を実現します。

③道プロジェクト

集落を、もっときれいに! 植栽を充実させ、シャッターアートを制作。無彩色の集落を楽しく、鮮やかな世界に変える努力を行うことで、心おどる散策に役立てます。

復興基金を活用した活動